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東野圭吾「再生魔術の女」被害者の姉が執念で解き明かす

東野圭吾さんの短編小説「再生魔術の女」は、2011年1月に光文社文庫から発売された短編小説集『あの頃の誰か』に収録されている。初出は『問題小説』とういう文芸誌の94年3月号。小説誌での発表から17年ほど経ってからの文庫化であった。分量は文庫本で32ページと短い。なお、徳間書店の文芸誌『問題小説』は、2012年1月号より誌名を『読楽』(どくらく)に改題している。

『あの頃の誰か』は、当初から文庫判として発売された短編小説集であり、「再生魔術の女」ほか全8編を収録している。東野圭吾さんの言葉を借りれば、「わけあり物件」が収録されているとのこと。
ただし、「再生魔術の女」に関しては、単に収録チャンスがなかったと、東野圭吾さんはあとがきで述べている。『あの頃の誰か』以前に、シリーズものでない短編集が刊行されたのは、94年2月刊行の『怪しい人びと』。「再生魔術の女」の発表は94年3月号。短編集『怪しい人びと』への収録には、間に合わなかったようだ。『あの頃の誰か』は、17年ぶりの、シリーズもの以外の短編集の発売であった。
あとがきを読むと、本短編集の中には、たくさん手直ししたり、収録を迷ったりした作品もあるようだ。しかし「再生魔術の女」に関しては、なかなか気に入っている、と述べている。

『あの頃の誰か』は、シリーズものでない8編を収める短編集である。8編のタイトルは、「シャレードがいっぱい」(コットン90年11月号)、「レイコと玲子」(コットン91年6月号)、「再生魔術の女」(問題小説94年3月号)、「さよなら『お父さん』」小説宝石94年7月号)、「名探偵退場」(『やっぱりミステリーが好き』新潮社90年6月刊)、「女も虎も」(IN★POCKET97年7月号)、「眠りたい死にたくない」(小説新潮95年10月号)、「二十年目の約束」(別冊小説宝石89年12月号)。
シャレードがいっぱい」と「レイコと玲子」を掲載した小説誌『コットン』の出版社は倒産している。徳間書店の文芸誌『問題小説』は、前述の通り、2012年1月号より誌名を『読楽』(どくらく)に改題。講談社の『IN★POCKET』は2018年8月号をもって休刊。
どの作品も、2011年1月刊行の『あの頃の誰か』まで、短編集への収録チャンスがなかった。もっとも東野圭吾さんにとっては、『あの頃の誰か』は17年ぶりの、シリーズもの以外の短編集の発売であった。

「再生魔術の女」の冒頭は、根岸夫婦が赤ん坊を養子にするために、引き取りの世話をしている、中尾章代宅を訪れた場面である。
妻の千鶴は、根岸家の社長令嬢。夫の峰和は、逆玉の輿に乗り婿養子となった。根岸家の後継ぎが欲しいのだが、千鶴の卵巣機能に生まれつきの欠陥がある。千鶴の方が、体外受精などの医学的な方法を好まなかった。
中尾章代は、普段、病院の産婦人科で働いている中年女性で、ボランティアで養子縁組の仲介をしている。

妻の千鶴は、赤ん坊を抱き、運転手が運転するベンツで、一足先に帰宅する。夫の峰和と中尾章代は、二人だけで今後の打ち合わせをすることにした。
すると、中尾章代は、十歳年下の妹が被害者となった、七年前の殺人事件ついて語り始める。未解決事件の推理が始まったのだ。
東野圭吾さん本人が気に入っているだけあって、凝りに凝った作品という印象を受けた。完成度も高いように思う。