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買い替えると買い換える、どちらが正しいのか

「買い替える」と「買い換える」、どちらの漢字を使うべきでしょうか。辞書類で調べたところ、「買い替える」の方が的確という見解が載っていました。ただ、最近刊行された本や雑誌でも、両方の字が使われています。この事は国語辞典でも言えます。

まず、『第13版記者ハンドブック(共同通信社)』と『最新用字用語ブック(時事通信社)』の「かえる・かわる」の項目についてです。
『記者ハンドブック』には、「換」がAとBを交換する場合で、「替」が新しく別のもの・行為にする場合であることが記されています。
同様に『最新用字用語ブック』では、「換」があるものを渡して別のものを受け取る場合で、「替」が前の物事をやめて別の物事をする・新しいものにする場合であることが記されています。
これに従えば、「買い替える」となります。どちらの用字用語集にも、用例として「買い替え」を載せています。

上記と同じ立場を取る国語辞典が、『三省堂国語辞典第七版(三省堂)』『岩波国語辞典第七版(岩波書店)』『新明解国語辞典第七版(三省堂)』です。この三冊では、「買い替え」という表記のみを載せています。
三省堂国語辞典第七版』は、「替える」「換える」「変える」「代える」を別々の見出しにして、さらに「返る」「帰る・還る」「孵る」等も、丁寧に解説しています。この書き分けに迷ったら、『三省堂国語辞典第七版』が頼りになるでしょう。

ただ、「買い替える」と「買い換える」の両方を認めている国語辞典も多いのです。『明鏡国語辞典第二版(大修館書店)』『新潮現代国語辞典第二版(新潮社)』は、「かいか・える」という見出しの後の表記欄は【買い換える・買い替える】となっています。
広辞苑第七版(岩波書店)』『大辞林三省堂)』『精選版日本国語大辞典小学館)』の、三冊の中型国語辞典においても、同様です。

『ベネッセ表現読解国語辞典(ベネッセコーポレーション)』では、「かいかえ」という見出しはありませんが、「か・える」の項目を見る限りでは、両方の表記を認めているようです。
『角川必携国語辞典(角川書店)』にも、「かいかえ」の項目はありません。「かえる」の項目を見ると、『記者ハンドブック』や『最新用字用語ブック』などに近い語釈でした。これに従えば「買い替える」となるでしょう。

最後に、「換」と「替」という二つの漢字を、『第五版漢字源(学研)』を参照しながら比較してみます。

『漢字源』には、「換」の意味について次のように記載しています。中身をすっかり入れかえる。取りかえる。入れかわる。
「換」は会意兼形成文字です。まず、会意文字の側面で述べると、「換」の原字である「奐」は、女性のしゃがんださまと、両手を組み合わせた会意文字です。
「奐」は、胎内から胎児を取り出すさまを表しています。「奐」の上部が両股を開いた女性のさまで、下部が両手です。この「奐」という字は、ゆとりをもって、まるく抜き取るという意も含みます。
次に形成文字の側面について述べます。「換」は意符「手」と音符「奐(カン)」の組み合わせです。

「替」の意味については、次のものと入れかわる、と『漢字源』に記載されています。「替」は、夫(おとこ)ふたりと、日(動詞の記号)を組み合わせた会意文字です。「替」は、Aの人からBの人へ入れかわる動作を示しているのです。