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村上春樹『一人称単数』作品を自由に楽しんでほしいとのこと

村上春樹氏は、高校生から短篇集『一人称単数』について質問を受けた際に、作品を自由に楽しんでほしい、と述べたそうだ。国語の設問で、主人公の心情や何を意味しているかなどを問われることがある。村上春樹氏は、これに否定的。著者の村上春樹氏本人も分からないことであり、意味や解釈については読む人の自由という意見だ。

同じようなことが、『一人称単数』の一篇「ウィズ・ザ・ビートルズ With the Beatles」に書かれている。もっとも、主人公の「僕」は、それが原因のひとつとなり、学業成績が振るわなかったようだ。

また、高校生たちは『一人称単数』の一篇「品川猿の告白」の中で、なぜ品川猿が好意を持った人間の女性の名前を盗むのか、という素朴な疑問について尋ねた。村上春樹氏は、猿にしかわからない、と返答したらしい。作者と読者の意見が違っても間違いではなく、物語は誰にでも平等に開かれている、というのが村上春樹氏の小説に対する考えのようだ。

それから村上春樹氏は、小説を書く際、あらかじめ話の筋を決めるのではなく、アイデアが浮かんだら自由に書き進めているとのこと。確かにデビュー作『風の歌を聴け』から最近の作品を通して、そういった印象を受ける。
ただ、『一人称単数』を読めばわかるように、文章は年々、凄味を増し洗練されてきていると思う。

そして村上春樹氏は、高校生たちに作品の情景が心に残ってほしい、と伝えたようだ。小説はどんな書き方をするのも自由だが、あえて必要なものを挙げるとすれば場面。
叙情や叙事より叙景というよりは、読み終わったときに、自らの心の動きを通して味わったことを、景色や場面として記憶してほしいということであろう。