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村上春樹『一人称単数』短篇集その8、書下ろしの表題作のテーマは人生の分岐点について!?

村上春樹氏の短篇小説集『一人称単数』が、文藝春秋から2020年7月18日に発売開始となった。
収録されている作品はぜんぶで8篇。
文藝春秋の月刊誌『文學界』の2018年7月号から2020年2月号に掲載された7作品と書下ろしの1作品から成る。
表題作の「一人称単数」が書下ろし。

7月18日に書店で購入したが、本日8月13日、お盆の墓参りを終え、ようやく表題作の「一人称単数」を読むことができた。
表題作の「一人称単数」が8作品目にあたり、これで短篇小説集『一人称単数』の8作品すべてが読了となった。

第8篇「一人称単数」の冒頭で、主人公は自分がスーツを身に纏うことがほとんどないことから語り始める。
ただし、クローゼットにある滅多に必要としないスーツやネクタイなどが気になる様子。
買ってからほとんど袖を通していないスーツがある。
それらのスーツを試しにちょっと着てみたり、ネクタイを締めたりすることがあるようだ。
大抵は一人で家にいるときに行い、そのまま一人で街を歩くこともある。

その日は、数年前に買ったポール・スミスのダーク・ブルーのスーツを広げ、ネクタイとシャツを合わせた。
そして一人で街に出て、一度も入ったことのないバーに入った。
結果論になるが、家で映画でも見ていればよかったと、ちょっと後悔することになる。

誰しも人生の分岐点というものがあり、これまで何度か経験してきたはず。
自分の人生に誰かの選択が影響することもあるだろう。
そして現在の自分がいるのだ。
村上春樹氏の言葉を借りれば、幾度も分岐点で選択してきた結果として次のようになる。

一人称単数の私として実在する

主人公は、初めて入ったバーで、50歳前後の女性と言葉を交わした。
会話の一言一句も選択肢になるだろう。
スーツとネクタイのコーディネートもまた然り。