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世の中の動きと文学について

村上春樹『一人称単数』短篇集その6「謝肉祭(Carnaval)」

主人公が50歳を少し過ぎたころの話とある。
この短篇小説には、音楽ホールで偶然出会った10歳くらい年下の女性のことが書かれている。
彼らはクラシック音楽を通して友だちになった。

その女性は、容貌は醜いが、話し上手で感じが良く話題は多岐、頭の回転が速く、音楽の趣味もなかなか。
服装の好みがよく、音楽ホールでは上等そうなドレスを着ているし、いつも小ぎれいな一流ブランドの服に身を包んでいる。
住まいは代官山の3LDKマンション、自家用車は真新しいBMWのセダン。
主人公は、彼女と2度目に会ったときに、結婚指輪をはめていることに気づく。

二人は、自分たちが愛する音楽について語り合うことに時間を費やした。
主人公の「僕」は彼女から、究極のピアノ音楽を1曲だけ残すとしたら、と質問される。
主人公はシューマンの『謝肉祭』を挙げた。

『謝肉祭(Carnaval)』は、ドイツの作曲家ロベルト・シューマンが作曲したピアノ曲集。
村上春樹氏がジャズとクラシック音楽の愛好者であることはよく知られている。
シューマンや『謝肉祭』を演奏するピアニストに関する見解を読んでいると、村上春樹氏のクラシック音楽への愛情を感じる。

二人はクラシック音楽を通して交流を続けたが、その関係は半年ほどしか続かなかった。
突然、彼女との連絡が取れなくなったのだ。

小説の後半で女性の正体が明らかになる。
正体が不明で違和感のある人には、何か裏があるということだろうか。
主人公は、小説の終盤で、大学生のときに一度だけ会った女子大生のことを思い出す。
女性を容貌だけで判断しないという点で、好感の持たれる男性ということになるだろう。