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村上春樹『一人称単数』短篇集その5「ヤクルト・スワローズ詩集」

村上春樹氏が神宮球場でヤクルト・スワローズの試合を観戦中に小説を書こうと決意したことは、ファンの間ではよく知られている話。
村上春樹氏はヤクルト・スワローズの名誉会員にもなっている。

この短篇小説には、相当な日数、神宮球場に足を運んでいると書かれている。
世間でも知られている話を、自らの文章で、冗談も交えながら書いているようだ。
村上春樹氏は小説の中で比喩を使うことが多い。
この小説でも比喩がある。
ただ冒頭には次のような文章があった。

つまりセックスに喩えれば、……いや、それはやめよう

村上春樹氏は、この作品を、過去を振り返りながら、思うままに冗談交じりで書いたような短篇小説に仕上げている。

この小説には、野球の試合を観戦しながら、野球を題材にした詩を書いていた、とある。
詩集に収めたという「右翼手」というタイトルの詩が載せてある。

この「右翼手」というタイトルの詩は、ヤクルト・スワローズ公式サイトにも掲載されている詩だ。
ヤクルト・スワローズ公式サイトには、短篇「ヤクルト・スワローズ詩集」の一部とほぼ同様の文章も、2014年のコピーライトと一緒に掲載されている。
ただし、1982年に半ば自費出版したとされる「ヤクルト・スワローズ詩集」は実在しないようだ。
これらの部分は架空の話であろう。
この短篇「ヤクルト・スワローズ詩集」は、実体験に冗談を交えたフィクションと考えられる。
エッセイ風の小説なだけで、すべてが事実というわけではない。