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世の中の動きと文学について

東野圭吾『祈りの幕が下りる時』複雑に絡み合ういくつもの謎は加賀恭一郎の母にも繋がっていた

本作の冒頭には、次のようなことが書かれている。仙台のスナックで働く、身寄りのない女性についてである。彼女は36歳の時に、夫と12歳の息子を残し、家を出た。
10年ほどが過ぎた頃、彼女は一人の客と深い仲になった。その相手の男性は、仕事で遠方に行くことが多い。
その頃、彼女は体調を崩し、スナックの仕事も休みがちに。そして自宅アパートの一室で、ひっそりと息を引き取った。発見したのはスナックの経営者。死後二日が経過。孤独死であった。
彼女が付き合っていた男性は、彼女の一人息子を探し出し、彼女の雇い主に、彼女の息子と連絡を取ってほしいと依頼した。その一人息子が、本シリーズの主人公、加賀恭一郎である。

さらに10年以上の歳月が流れる。その間、東日本大震災原発事故があった。これらの大きな災害と、前述した冒頭の出来事は、この後に捜査が始まる、東京の下町、葛飾区小菅で起きた殺人事件に繋がってゆく。

本作では、仙台が舞台のひとつ。僕が長い間暮らしていた都市である。街並みの描写が正確であると感じた。おそらく他の場所についても同じことが言えるのであろう。心理描写もよく、登場人物の心情もよく伝わってきた。しっかりと情景が浮かんでくるので、物語に浸りやすい作品であった。