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高橋弘希『送り火』なぜ苛めや暴力は起こるのか、どうすれば無くなるのか

高橋弘希氏の『送り火』は第159回芥川賞受賞作である。初出は文藝春秋が発行する月間文芸誌「文學界」の2018年5月号。2018年7月に文藝春秋より単行本が刊行された。単行本で120ページの分量である。

主人公は中学三年生の歩。父母と三人家族である。商社勤めの父は転勤が多く、今回は進級する春先に合わせて、東京から津軽地方の山間部へ引っ越してきた。田畑に囲まれた山間部だが、自転車で市街地へ出ることができる。歩は集団に溶け込むことが上手く、今回の転校でも上手くやれると考えていた。

歩が通うことになった市立第三中学校は、三学年の全生徒の人数は十二人。歩もその中に加わることになる。ただし、来春に廃校となり、市街地の学校と統合される。
歩は始業式後の学級会で紹介された。第三中学校の三学年の男子は、晃、稔、藤間、内田、近野の五人。休み時間に歩は晃に話しかけられた。歩は晃が学級の中心人物だと直感する。そして歩は新たな学校生活に期待を持つ。

しかし、翌日の放課後、歩は女子グループから晃による稔への暴行事件のことを聞かされる。転入して一週間後の放課後、歩は学校の敷地で晃に呼び止めら、生徒たちの輪に加わった。そこには三学年の男子全員がいた。彼らは地方特有の花札をしていた。歩は晃から見学しているように言われる。実は万引きの実行犯を決める賭けをしていた。万引きは実行され、歩は不本意ながら犯罪に関わってしまう。

このように問題がありそうな学校だが、意外にも歩は平和な学校生活を送り始めた。晃との関係は良好なようだ。しかし、思わぬところから事件が起こる。
冒頭から苛めや暴力の気配のある作品であるが、結末で衝撃を受ける。歩は、教師からも協調性や公正・公平さを評価されるような生徒。しかし、何処で誰に恨まれるかは、相手にしか分からない。読み終えると、送り火というタイトルからは想像しないような結末であった。