Literary blog

読書や映画鑑賞などの記録

吉田修一『パーク・ライフ』出会いは思いがけない場所で

吉田修一氏の『パーク・ライフ』は、第127回芥川賞受賞作である。初出は文藝春秋の月刊文芸誌「文學界」の2002年6月号。『パーク・ライフ』は、2002年8月に文藝春秋から単行本として刊行された。単行本には、「文學界」1999年8月号に掲載された『flower』も…

松浦寿輝『花腐し』バブル崩壊から十年経った東京の古い木造アパートの一室

松浦寿輝氏の『花腐し』は第123回芥川賞受賞作である。初出は講談社の月刊文芸誌「群像」の2000年5月号。『花腐し』は、2000年7月に講談社から単行本として刊行されている。 単行本には、書き下ろし短編小説『ひたひたと』を併録。単行本『花腐し』の分量は1…

石川達三『蒼氓』社会派作家の視線は民衆に向けられていた

石川達三氏(1905~85年)の『蒼氓』は、1935(昭和10)年の第1回芥川賞受賞作である。石川達三氏は秋田県出身の作家。作品の舞台は、1930(昭和5)年、神戸の国立海外移民収容所。これから900人以上の移民希望者が、ひと月半かけて、ブラジルのサンパウロ州…

古川真人『背高泡立草』島の歴史とゆかりのある家族

古川真人氏の『背高泡立草』は第162回芥川賞受賞作である。初出は集英社の月刊文芸誌「すばる」の2019年10月号。『背高泡立草』は、2020年1月に集英社から単行本として刊行されている。単行本で143ページの分量である。古川真人氏は1988年福岡県福岡市生まれ…

上田岳弘『ニムロッド』謎のメールの展開と三人の関係

上田岳弘氏の『ニムロッド』は第160回芥川賞受賞作である。初出は講談社の月間文芸誌「群像」の2018年12月号。2019年1月に講談社から単行本が刊行された。単行本で136ページの分量である。上田岳弘氏は1979年、兵庫県生まれ。本作は、仮想通貨のビットコイン…

町屋良平『1R1分34秒』主人公の「ぼく」の人間性をどう思いますか?

町屋良平氏の『1R1分34秒』は第160回芥川賞受賞作である。初出は新潮社が発行している月間文芸誌「新潮」の2018年11月号。2019年1月に新潮社から単行本が刊行された。単行本で140ページの分量である。町屋良平氏は1983年、東京都生まれ。タイトルの『1R1分34…

高橋弘希『送り火』なぜ苛めや暴力は起こるのか、どうすれば無くなるのか

高橋弘希氏の『送り火』は第159回芥川賞受賞作である。初出は文藝春秋が発行する月間文芸誌「文學界」の2018年5月号。2018年7月に文藝春秋より単行本が刊行された。単行本で120ページの分量である。 主人公は中学三年生の歩。父母と三人家族である。商社勤め…

石井遊佳『百年泥』人生は不特定多数の人々の記憶の継ぎ合わせ

石井遊佳氏の『百年泥』は、2017年に第49回新潮新人賞を受賞し月間文芸誌「新潮」に掲載され、第158回芥川賞を受賞した作品である。新潮社から単行本が刊行されたのは2018年1月。125ページの分量である。石井遊佳氏は1963年大阪府枚方市生まれ。 小説の舞台…

東野圭吾「再生魔術の女」被害者の姉が執念で解き明かす

東野圭吾さんの短編小説「再生魔術の女」は、2011年1月に光文社文庫から発売された短編小説集『あの頃の誰か』に収録されている。初出は『問題小説』とういう文芸誌の94年3月号。小説誌での発表から17年ほど経ってからの文庫化であった。分量は文庫本で32ペ…

東野圭吾「さよなら『お父さん』」、名作『秘密』のプロトタイプはわけあり物件!?

東野圭吾さんの短編小説「さよなら『お父さん』」の初出は、光文社が発行している小説誌「小説宝石」の1994年7月号。その後、2011年1月に光文社文庫から発売された短編小説集『あの頃の誰か』に収録された。小説誌での発表から16年以上経ってからの文庫化で…

東野圭吾「シャレードがいっぱい」バブル景気の世相を思い出させる短編ミステリー

東野圭吾さんの短編小説「シャレードがいっぱい」は、2011年1月に光文社文庫から発売された短編小説集『あの頃の誰か』に収録されている。初出は『コットン』という小説の、90年11月号。小説誌での発表から20年以上経ってからの文庫化であった。文庫本で78ペ…

村上春樹『一人称単数』短篇集についての総括と世間の評判

短篇集は、文章の名手と言われるような、老練な作家が書くもの、という意見を聞くことがある。この考えからすると、村上春樹氏の短篇集『一人称単数』は正にその通りである。村上春樹氏本人は、短篇の創作を実験の場としている、といった発言をすることがあ…

村上春樹『一人称単数』作品を自由に楽しんでほしいとのこと

村上春樹氏は、高校生から短篇集『一人称単数』について質問を受けた際に、作品を自由に楽しんでほしい、と述べたそうだ。国語の設問で、主人公の心情や何を意味しているかなどを問われることがある。村上春樹氏は、これに否定的。著者の村上春樹氏本人も分…

東野圭吾『放課後』、1985年に江戸川乱歩賞を受賞したデビュー作

『放課後』は1985年の第31回江戸川乱歩賞受賞作。女子高を舞台にした学園ミステリーである。東野圭吾さんは、この作品で作家デビューを果たした。『放課後』は、東野圭吾さんのデビュー作として、1985年9月に講談社から単行本として刊行された。単行本で308…

佐伯泰英『居眠り磐音 陽炎ノ辻』大長編シリーズの第1作

佐伯泰英さんの「居眠り磐音シリーズ」は全51巻からなる文庫書下ろしの時代小説。佐伯泰英さんは、1942年、北九州市生まれ。第1作『居眠り磐音 江戸双紙1 陽炎ノ辻』が、双葉社から刊行されたのが2002年4月、最終の51巻『旅立ノ朝』が完結したのが2016年1月…

多和田葉子『犬婿入り』一軒家で学習塾を一人で経営する39歳の独身女性の話

多和田葉子さんの『犬婿入り』は、第108回芥川賞(1992年下半期)の受賞作です。多和田葉子さんは、1960年、東京生まれ。『犬婿入り』の初出は、講談社発行の月間文芸雑誌『群像』の1992年12月号。1993年2月に単行本として講談社から刊行された『犬婿入り』に…

東野圭吾『容疑者Xの献身』この世に存在することさえ知らなかった愛情表現とは

東野圭吾さんのミステリー小説『容疑者Xの献身』は、2005年8月に文藝春秋より単行本として刊行された。初出は文藝春秋の月刊小説誌『オール讀物』で、2003年6月号から2004年6月号、2004年8月号から2005年1月号に連載されていた。連載時の題名は『容疑者X』…

東野圭吾『探偵ガリレオ』、1998年刊行の人気シリーズ第1弾

ミステリー小説『探偵ガリレオ』は、1998年5月に文藝春秋から単行本が刊行された、東野圭吾さんの著作、ガリレオシリーズの第1作。初出は文藝春秋の月刊小説誌『オール讀物』である。『探偵ガリレオ』には、『オール讀物』に1996年から1998年にかけて掲載さ…

東野圭吾『卒業』、作家デビュー2作目であり、人気シリーズの第1弾

『卒業』は、1986年5月に講談社から単行本が刊行された、東野圭吾さんの推理小説。その後、人気シリーズとなった加賀恭一郎シリーズの第1弾である。東野圭吾さんにとっては、作家デビュー2作目にあたる。シリーズ第2弾の『眠りの森』以降は、加賀恭一郎は刑…

村上春樹『スプートニクの恋人』22歳の女性の同性への恋と彼女が必要とする異性の友人

『スプートニクの恋人』は、村上春樹氏の9作目の長篇小説。1999年に講談社より刊行された書下ろし長篇小説である。単行本のページ数は309ページ。この小説は、「すみれ」という22歳の女性のことを中心とする物語である。すみれは22歳の春に初めて恋に落ちた…

村上龍『KYOKO』を読んだ感想、登場人物も読者も心を打たれてしまう女の子

村上龍氏の小説『KYOKO』を読みました。小説『KYOKO』は、1995年に集英社から刊行された書下ろし小説です。実は『KYOKO』は、村上龍氏が監督・脚本を務めた映画をノベライズした作品です。村上龍氏は、『KYOKO』のあらすじを書き、脚本を書いて映画化してか…

村上龍『トパーズ』都市の暗部で生きる女の子達

村上龍氏の短篇小説集『トパーズ』は、1988年に角川書店から刊行された。1982年から1988年にかけて、『月刊カドカワ』(角川書店)のほか、『小説すばる』(集英社)、『マリ・クレール』(中央公論社)、『文藝』(河出書房新社)、『海』(中央公論社)の4…

村上春樹『四月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて』

この長いタイトルの小説は、6ページで完結する、4、5千文字程度の短い短篇小説です。初出は『トレフル1981年7月号』。『トレフル』とは、伊勢丹主催のサークルで、会員に配布された非売品雑誌です。そして『トレフル』掲載の一連の短篇は、『カンガルー日…

村上春樹『螢』は大ベストセラー長編の下敷きになった短編小説

村上春樹氏の短編小説『螢』の初出は『中央公論1983年1月号』(中央公論新社)。また短編『螢』は、1984年に新潮社から刊行された短編集『螢・納屋を焼く・その他の短編』にも収められている。『螢』は、長編小説『ノルウェイの森』(1987年,講談社)の第2章…

村上春樹『国境の南、太陽の西』幸せなはずの「僕」が満たされない理由

『国境の南、太陽の西』は、村上春樹氏の7作目の長篇小説。1992年に講談社から刊行された。単行本のページ数は294ページ。章分けされており、1から15までナンバリングしてある。主人公は始(はじめ)という名前の男性で、物語は「僕」という一人称単数で語ら…

小説を書く力について

公募ガイド2020年9月号に掲載されている「3日間で書ける!超短編小説キット」という記事を紹介する。この号では、雑誌の14ページを割いて、小説を書くためのコツを具体的に分かりやすく解説している。この記事は、原稿用紙10枚の小説を想定し、着想から推敲…

村上春樹『ダンス・ダンス・ダンス』34歳になった主人公の「僕」

『ダンス・ダンス・ダンス』は、1988年に講談社から、上下巻で刊行された書下ろしの長編小説。本作は、1979年から1982年にかけて刊行された、村上春樹氏の初期三部作の続編だ。主人公の「僕」は、原則的に同一人物である。村上春樹氏は、1979年に『風の歌を…

村上春樹『羊をめぐる冒険』僕は鼠と再会できるのか

『羊をめぐる冒険』は、村上春樹氏の3作目の長編小説。1982年に『群像』8月号に掲載され、同年に講談社より単行本化された。この作品は、野間三賞の一つである野間文芸新人賞の第4回受賞作である。野間三賞とは、「野間文芸賞」「野間文芸新人賞」「野間児…

村上春樹『1973年のピンボール』僕と鼠のその後

『1973年のピンボール』(講談社)は、1980年に発表された村上春樹氏の2作目の長編小説です。1980年の『群像』3月号に掲載され、同年6月に講談社より単行本化されました。第83回芥川龍之介賞候補および第2回野間文芸新人賞候補となりましたが、受賞はしてい…

村上春樹氏の世界観をインタビューや作品を基に考える

村上春樹という作家のおさらい 朝日新聞「平成の30冊」を発表、1位は村上春樹氏の長編小説『1Q84』 2009年にYOMIURI ONLILEの「本よみうり堂」に掲載されたインタビュー記事 2011年にニューヨーク・タイムズ・マガジンに掲載された村上春樹氏へのインタビュ…