文学の心得

言葉について考え、想像力を育み、人生をより豊かに

村上春樹『一人称単数』短篇集についての総括と世間の評判

短篇集は、文章の名手と言われるような、老練な作家が書くもの、という意見を聞くことがある。この考えからすると、村上春樹氏の短篇集『一人称単数』は正にその通りである。村上春樹氏本人は、短篇の創作を実験の場としている、といった発言をすることがあ…

村上春樹『一人称単数』作品を自由に楽しんでほしいとのこと

村上春樹氏は、高校生から短篇集『一人称単数』について質問を受けた際に、作品を自由に楽しんでほしい、と述べたそうだ。国語の設問で、主人公の心情や何を意味しているかなどを問われることがある。村上春樹氏は、これに否定的。著者の村上春樹氏本人も分…

村上春樹『一人称単数』短篇集その8、書下ろしの表題作のテーマは人生の分岐点について!?

村上春樹氏の短篇小説集『一人称単数』に収録されている作品はぜんぶで8篇。書下ろしの表題作が8篇目にあたり、これで短篇小説集の8作品すべてが読了となった。

村上春樹『一人称単数』短篇集その7「品川猿の告白」

主人公の「僕」が群馬の温泉地で一人旅をしたときの出来事とある。この短篇は、口をきく猿が登場する話だ。 『品川猿の告白』は、2005年に新潮社から発売された短篇集『東京奇譚集』所収の「品川猿」の続編。この時は、「彼女」という三人称単数で書かれてい…

村上春樹『一人称単数』短篇集その6「謝肉祭(Carnaval)」

主人公が50歳を少し過ぎたころの話とある。この短篇小説には、音楽ホールで偶然出会った10歳くらい年下の女性のことが書かれている。彼らはクラシック音楽を通して友だちになった。 その女性は、容貌は醜いが、話し上手で感じが良く話題は多岐、頭の回転が速…

村上春樹『一人称単数』短篇集その5「ヤクルト・スワローズ詩集」

村上春樹氏が神宮球場でヤクルト・スワローズの試合を観戦中に小説を書こうと決意したことは、ファンの間ではよく知られている話。村上春樹氏はヤクルト・スワローズの名誉会員にもなっている。 この短篇小説には、相当な日数、神宮球場に足を運んでいると書…

村上春樹『一人称単数』短篇集その4「ウィズ・ザ・ビートルズ With the Beatles」

語り手である主人公が、高校時代を回想するような展開で物語は始まる。語り手の高校時代は1960年代半ば。村上春樹氏の高校時代と重なる。主人公がジャズとクラシック音楽が好きなことも、著者と同じだ。この作品は、体験に基づいているかは別として、主人公…

村上春樹『一人称単数』短篇集その3「チャーリー・パーカー・プレイズ・ボサノヴァ」

1955年に亡くなったジャズのサックス奏者をモチーフにした架空の話 「チャーリー・パーカー・プレイズ・ボサノヴァ」とは、実在しないレコードのタイトル名。主人公の「僕」は、大学生のときに架空のレコード批評を書いたことがある。非常識極まりなく感じる…

村上春樹『一人称単数』短篇集その2「クリーム」は哲学的

村上春樹さんの短篇集『一人称単数』の2作品目「クリーム」を読み終えました。 哲学的に感じる理由は2つ。 一つは、意気消沈して公園のベンチに腰を下ろす語り手の「ぼく」の前に突然現れた、老人の哲学的な話。 もう一つは、語り手の「ぼく」が、老人の話を…

村上春樹『一人称単数』8作からなる短篇小説集、その1「石のまくらに」を読んで

村上春樹氏の短篇小説集『一人称単数』が、文藝春秋から2020年7月18日に発売開始となった。短篇小説集の刊行は6年ぶりである。収録されている作品はぜんぶで8作品。文藝春秋の月刊誌『文學界』の2018年7月号から2020年2月号に掲載された7作品と書下ろしの1作…