Literary blog

読書や映画鑑賞などの記録

吉田修一『パーク・ライフ』出会いは思いがけない場所で

吉田修一氏の『パーク・ライフ』は、第127回芥川賞受賞作である。初出は文藝春秋の月刊文芸誌「文學界」の2002年6月号。『パーク・ライフ』は、2002年8月に文藝春秋から単行本として刊行された。単行本には、「文學界」1999年8月号に掲載された『flower』も…

松浦寿輝『花腐し』バブル崩壊から十年経った東京の古い木造アパートの一室

松浦寿輝氏の『花腐し』は第123回芥川賞受賞作である。初出は講談社の月刊文芸誌「群像」の2000年5月号。『花腐し』は、2000年7月に講談社から単行本として刊行されている。 単行本には、書き下ろし短編小説『ひたひたと』を併録。単行本『花腐し』の分量は1…

森田良行『助詞・助動詞の辞典』日本語における重要な役割

日本語の助詞・助動詞について深く学びたいなら、森田良行氏の『助詞・助動詞の辞典』をお薦めしたい。助詞・助動詞に関する疑問を、この一冊で解決できそうな内容である。助詞・助動詞については、わかっているようで理解できていないことが多いのではない…

石川達三『蒼氓』社会派作家の視線は民衆に向けられていた

石川達三氏(1905~85年)の『蒼氓』は、1935(昭和10)年の第1回芥川賞受賞作である。石川達三氏は秋田県出身の作家。作品の舞台は、1930(昭和5)年、神戸の国立海外移民収容所。これから900人以上の移民希望者が、ひと月半かけて、ブラジルのサンパウロ州…

類語国語辞典の価値を知る

一般的な国語辞典はアイウエオ順の配列。対して、類語国語辞典は、単語を体系的に意味別に分類して配列している。これは両者の大きな相違点だ。そのため類語国語辞典は、一般的な国語辞典のように五十音順では引けない。索引から引くことになる。 著者の一人…

『てにをは辞典』言葉の結びつきに特化した文章上達のための辞典

「てにをは」とは 『てにをは辞典』はどういう本? 『てにをは辞典』には60万の結合語例が載っている 言葉の結びつきの法則を知ると文章は上達する 「てにをは」とは 「てにをは」とは、日本語の助詞・助動詞・活用語尾・接尾語など、文節の末尾に付く語の総…

文章表記の目安やよりどころになる共同通信社や時事通信社の用字用語集

報道関連の用字用語には、決まりや表記の基準のようなものがある。それを示したハンドブックが、共同通信社の『記者ハンドブック』や時事通信社の『用字用語ブック』。日本の記者の多くが、こういったハンドブックなどを基準にして記事を書いている。 これら…

古川真人『背高泡立草』島の歴史とゆかりのある家族

古川真人氏の『背高泡立草』は第162回芥川賞受賞作である。初出は集英社の月刊文芸誌「すばる」の2019年10月号。『背高泡立草』は、2020年1月に集英社から単行本として刊行されている。単行本で143ページの分量である。古川真人氏は1988年福岡県福岡市生まれ…

町屋良平『1R1分34秒』主人公の「ぼく」の人間性をどう思いますか?

町屋良平氏の『1R1分34秒』は第160回芥川賞受賞作である。初出は新潮社が発行している月間文芸誌「新潮」の2018年11月号。2019年1月に新潮社から単行本が刊行された。単行本で140ページの分量である。町屋良平氏は1983年、東京都生まれ。タイトルの『1R1分34…

上田岳弘『ニムロッド』謎のメールの展開と三人の関係

上田岳弘氏の『ニムロッド』は第160回芥川賞受賞作である。初出は講談社の月間文芸誌「群像」の2018年12月号。2019年1月に講談社から単行本が刊行された。単行本で136ページの分量である。上田岳弘氏は1979年、兵庫県生まれ。本作は、仮想通貨のビットコイン…

高橋弘希『送り火』なぜ苛めや暴力は起こるのか、どうすれば無くなるのか

高橋弘希氏の『送り火』は第159回芥川賞受賞作である。初出は文藝春秋が発行する月間文芸誌「文學界」の2018年5月号。2018年7月に文藝春秋より単行本が刊行された。単行本で120ページの分量である。 主人公は中学三年生の歩。父母と三人家族である。商社勤め…

石井遊佳『百年泥』人生は不特定多数の人々の記憶の継ぎ合わせ

石井遊佳氏の『百年泥』は、2017年に第49回新潮新人賞を受賞し月間文芸誌「新潮」に掲載され、第158回芥川賞を受賞した作品である。新潮社から単行本が刊行されたのは2018年1月。125ページの分量である。石井遊佳氏は1963年大阪府枚方市生まれ。 小説の舞台…

東野圭吾「再生魔術の女」被害者の姉が執念で解き明かす

東野圭吾さんの短編小説「再生魔術の女」は、2011年1月に光文社文庫から発売された短編小説集『あの頃の誰か』に収録されている。初出は『問題小説』とういう文芸誌の94年3月号。小説誌での発表から17年ほど経ってからの文庫化であった。分量は文庫本で32ペ…

東野圭吾「シャレードがいっぱい」バブル景気の世相を思い出させる短編ミステリー

東野圭吾さんの短編小説「シャレードがいっぱい」は、2011年1月に光文社文庫から発売された短編小説集『あの頃の誰か』に収録されている。初出は『コットン』という小説の、90年11月号。小説誌での発表から20年以上経ってからの文庫化であった。文庫本で78ペ…

東野圭吾「さよなら『お父さん』」、名作『秘密』のプロトタイプはわけあり物件!?

東野圭吾さんの短編小説「さよなら『お父さん』」の初出は、光文社が発行している小説誌「小説宝石」の1994年7月号。その後、2011年1月に光文社文庫から発売された短編小説集『あの頃の誰か』に収録された。小説誌での発表から16年以上経ってからの文庫化で…

村上春樹『一人称単数』短篇集についての総括と世間の評判

短篇集は、文章の名手と言われるような、老練な作家が書くもの、という意見を聞くことがある。この考えからすると、村上春樹氏の短篇集『一人称単数』は正にその通りである。村上春樹氏本人は、短篇の創作を実験の場としている、といった発言をすることがあ…

村上春樹『一人称単数』作品を自由に楽しんでほしいとのこと

村上春樹氏は、高校生から短篇集『一人称単数』について質問を受けた際に、作品を自由に楽しんでほしい、と述べたそうだ。国語の設問で、主人公の心情や何を意味しているかなどを問われることがある。村上春樹氏は、これに否定的。著者の村上春樹氏本人も分…

東野圭吾『放課後』、1985年に江戸川乱歩賞を受賞したデビュー作

『放課後』は1985年の第31回江戸川乱歩賞受賞作。女子高を舞台にした学園ミステリーである。東野圭吾さんは、この作品で作家デビューを果たした。『放課後』は、東野圭吾さんのデビュー作として、1985年9月に講談社から単行本として刊行された。単行本で308…

佐伯泰英『居眠り磐音 陽炎ノ辻』大長編シリーズの第1作

佐伯泰英さんの「居眠り磐音シリーズ」は全51巻からなる文庫書下ろしの時代小説。佐伯泰英さんは、1942年、北九州市生まれ。第1作『居眠り磐音 江戸双紙1 陽炎ノ辻』が、双葉社から刊行されたのが2002年4月、最終の51巻『旅立ノ朝』が完結したのが2016年1月…

多和田葉子『犬婿入り』一軒家で学習塾を一人で経営する39歳の独身女性の話

多和田葉子さんの『犬婿入り』は、第108回芥川賞(1992年下半期)の受賞作です。多和田葉子さんは、1960年、東京生まれ。『犬婿入り』の初出は、講談社発行の月間文芸雑誌『群像』の1992年12月号。1993年2月に単行本として講談社から刊行された『犬婿入り』に…

東野圭吾『容疑者Xの献身』この世に存在することさえ知らなかった愛情表現とは

東野圭吾さんのミステリー小説『容疑者Xの献身』は、2005年8月に文藝春秋より単行本として刊行された。初出は文藝春秋の月刊小説誌『オール讀物』で、2003年6月号から2004年6月号、2004年8月号から2005年1月号に連載されていた。連載時の題名は『容疑者X』…

東野圭吾『探偵ガリレオ』、1998年刊行の人気シリーズ第1弾

ミステリー小説『探偵ガリレオ』は、1998年5月に文藝春秋から単行本が刊行された、東野圭吾さんの著作、ガリレオシリーズの第1作。初出は文藝春秋の月刊小説誌『オール讀物』である。『探偵ガリレオ』には、『オール讀物』に1996年から1998年にかけて掲載さ…

東野圭吾『卒業』、作家デビュー2作目であり、人気シリーズの第1弾

『卒業』は、1986年5月に講談社から単行本が刊行された、東野圭吾さんの推理小説。その後、人気シリーズとなった加賀恭一郎シリーズの第1弾である。東野圭吾さんにとっては、作家デビュー2作目にあたる。シリーズ第2弾の『眠りの森』以降は、加賀恭一郎は刑…

村上春樹『スプートニクの恋人』22歳の女性の同性への恋と彼女が必要とする異性の友人

『スプートニクの恋人』は、村上春樹氏の9作目の長篇小説。1999年に講談社より刊行された書下ろし長篇小説である。単行本のページ数は309ページ。この小説は、「すみれ」という22歳の女性のことを中心とする物語である。すみれは22歳の春に初めて恋に落ちた…

村上龍『KYOKO』を読んだ感想、登場人物も読者も心を打たれてしまう女の子

村上龍氏の小説『KYOKO』を読みました。小説『KYOKO』は、1995年に集英社から刊行された書下ろし小説です。実は『KYOKO』は、村上龍氏が監督・脚本を務めた映画をノベライズした作品です。村上龍氏は、『KYOKO』のあらすじを書き、脚本を書いて映画化してか…

村上龍『トパーズ』都市の暗部で生きる女の子達

村上龍氏の短篇小説集『トパーズ』は、1988年に角川書店から刊行された。1982年から1988年にかけて、『月刊カドカワ』(角川書店)のほか、『小説すばる』(集英社)、『マリ・クレール』(中央公論社)、『文藝』(河出書房新社)、『海』(中央公論社)の4…

村上春樹『四月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて』

この長いタイトルの小説は、6ページで完結する、4、5千文字程度の短い短篇小説です。初出は『トレフル1981年7月号』。『トレフル』とは、伊勢丹主催のサークルで、会員に配布された非売品雑誌です。そして『トレフル』掲載の一連の短篇は、『カンガルー日…

魅力的な文章を書くためにセンスを磨く、必要なのは文章力と構成力と取材力

文章力、特にライターの文章力に関する本を何冊も読んだ。ライターに必要な文章力として、共通して書かれているのは、論理的で分かりやすい文章を書くことの重要性。小説家ではないライターは、文学的な表現を要求されることはない。ライターの仕事では、文…

文章の種類を把握することは文章上達のポイントのひとつ

まつかわゆま氏の『映画ライターになる方法』を読んで文章術を学ぶ ライターのお手本はビジネス文書 短い文章の場合は起承転結や5W1Hに拘らない 「私は」と書き始めるのは子供の作文!? ライターが美文を求められることは少ない エッセイやコラムでは語尾の…

編集者の視点を持つと文章力は向上する

上野郁江氏の著書『才能に頼らない文章術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を読んだ。上野郁江氏は、出版社で編集者としてビジネス書を担当し、独立した方。 作家やライターが書いた文章術の書籍を、これまで何冊か読んだ。この本は、出版社の元編集者…