世の中の動きと文学について

言葉について考え、想像力を育み、人生をより豊かに

島本理生『ファーストラヴ』普通の初恋ではない、歪められた記憶

本作の主人公は臨床心理士の真壁由紀という女性です。精神科のクリニックに勤めていて、テレビ番組にゲスト出演することもあります。彼女は、ある事件の被告人を取材し、本人の半生を臨床心理士の視点から本にまとめるという企画を、出版社から持ち掛けられました。
ある事件とは、女子大生・聖山環菜が父親である画家の聖山那雄人を刺殺したとされる事件です。聖山環菜はアナウンサーを志望していました。そしてキー局の二次面接の直後に、父親の職場で事件は起こります。一部報道では、両親にテレビ局への就職を反対されたことが発端になったのでは、という意見が出ています。逮捕後の取り調べで、聖山環菜が「動機はそちらで見つけてください」と述べたとされ、その台詞も話題になっています。実際は多くのことが歪められていたようです。
真壁由紀は拘置所の聖山環菜やその周辺の人々と面会を重ね、夫・我聞の弟で弁護士の庵野迦葉や担当編集者の辻らと共に、本当の動機を探ろうとします。真壁由紀は、報道されているような単純な動機だけが原因ではないことに気づき、聖山環菜の過去に触れ、自身の記憶とも向き合いながら、真相を見きわめるために尽力します。事件の真相が歪められているだけでなく、殺人を犯した聖山環菜の記憶も歪められていました。女性や弱者に対する社会の理不尽さに目を向けさせる小説です。

島本理生さんは1983年生まれ、東京都出身。長篇小説『ファーストラヴ』は第159回(2018年上半期)直木賞受賞作です。

 

村上春樹『カンガルー日和』リリカルな作風の掌編集

村上春樹さんの短編集『カンガルー日和』は1983年9月に平凡社より刊行されました。判型が約15㎝×17㎝のA5変形サイズで、ページ数が236ページの単行本です。1986年10月には講談社より文庫本が刊行され、現在はKindle版も購入できます。

 

短編集『カンガルー日和』は、村上春樹さんが上梓した短編集の中では2作品目にあたります。掌編小説集としては初の作品集です。
すべての作品の初出は、一般書店の店頭には出ない『トレフル』という雑誌です。1981年4月から83年3月にわたって連載されました。『トレフル』は伊勢丹主催のサークルが会員に配っていたものです。毎号、400字詰めにして8枚から14枚くらいの長さで連載されました。「図書館奇譚」という作品だけ6回連続でしたが、他の17作品は1話完結です。

1983年7月のあとがきにおいて、村上春樹さんは次のようなことを述べています。

この雑誌は一般書店の店頭には出ない種類のものなので、僕としては他人の目をあまり気にせずに、のんびりとした気持で楽しんで連載をつづけることができた。

次のようなことも書かれています。

中には現在の僕の意に沿わないものもあるし、長編のためのスケッチ風に書いて実際に組み込んだものもある。しかし結局、取捨選択は一切せずにそのまま本に入れることにした。

収録作品は次の18編です。

カンガルー日和」「4月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて」「眠い」「タクシーに乗った吸血鬼」「彼女の町と、彼女の緬羊」「あしか祭り」「鏡」「1963/1982年のイパネマ娘」「バート・バカラックはお好き?」「5月の海岸線」「駄目になった王国」「32歳のデイトリッパー」「とんがり焼の盛衰」「チーズ・ケーキのような形をした僕の貧乏」「スパゲティーの年に」「かいつぶり」「サウスベイ・ストラット」「図書館奇譚 1 ~ 6 」

「4月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて」は、男の子と女の子が出会い離れ離れになり、大人になってからお互いを探し始めるという物語ですが、これを派生させたのが2009年5月から2010年4月にかけて上梓された長編小説『1Q84』です。

「図書館奇譚」には、村上作品で何度か登場するキャラクター「羊男」が登場します。「羊男」は、1982年10月刊行の長編小説『羊をめぐる冒険』、1983年5月刊行の短編集『中国行きのスロウ・ボート』の「シドニーのグリーン・ストリート」、1988年10月刊行の長編小説『ダンス・ダンス・ダンス』などに登場するキャラクターです。
「羊男」は本物の羊の皮をすっぽりとかぶり、手には黒い手袋、足には黒い作業靴、顔には黒いフェース・マスクといった格好。

都会のメルヘンであったり、奇妙な話であったり、読者をやさしく包み込んだりと、作品ごとに変化があります。全体的にはセンチメンタルな作品が多く、リリカルな作風の掌編集という印象を受けました。本文にはイラストが描かれています。これらは佐々木マキさんのイラストです。

漸くiPhoneへ復帰

 

Android端末からiPhoneへ機種変更しました。6年ぶりのiPhoneへの復帰です。つい先日に購入したばかりですが、iPhoneにして良かったと実感しています。何が違うかと言うと操作性です。これまで格安スマホを使っていたということもありますが、やはりiPhoneの使い勝手の良さは確かなものでした。
機種変更前はZenFone 3 MAXで、その前はfreetel priori2 LTEでした。ハイスペックなモデルのAndroidスマホを使っていれば、違った感想もあったかもしれません。しかし実店舗でAndroidスマホの高級機モデルを操作してみたこともありますが、iPhoneには劣っていたと記憶しています。
では何故Androidスマホにしたかというと、一番は値段の問題でした。その頃は屋外で作業をすることが多かったので、値段が張るiPhoneを持ち歩くことを躊躇うようになりました。それでスマホを買い替える際にiPhoneをやめて格安スマホを使うことにしたのです。

ガラケーからiPhoneへ機種変更したのは2010年ごろでした。その時に購入した機種はiPhone 4です。その頃はSoftbankと携帯電話の契約をしていました。Softbankからの購入でしたが、機種代を高額と感じることはありませんでした。ただしiPhone本体は値上がりしていきます。
Softbankユーザーになったのは社会人一年目のときです。Softbankと契約し携帯電話を使い始めました。約18年間、Softbankのユーザーでした。
しかし通信料の節約を考えるようになり、Softbankを解約して格安SIMを扱うMVNO(Mobile Virtual Network Operator)に乗り換えました。その頃の大手キャリア3社のプランは、いずれも月額料金が高く、MVNOに魅力を感じました。2015年のことです。

契約したのはMVNOの中でも低価格なFREETELです。その時に最初のAndroidスマホとして購入したのが、freetel priori2 LTEでした。操作性が落ち、ストレージ容量が8GBと低スペックでしたが、2年間ほど使い続けました。iPhone 4 のストレージ容量は32GBでしたので、ストレージ容量が4分の1の機種に変更したことになります。外部メディアとしてmicroSDを挿していましたが、アップデートやアプリのインストールに必要なのは内部メディアです。
freetel priori2 LTEはバッテリー切れも早かったので、2年ほどで買い替えることにしました。次に購入したのはZenFone 3 MAXです。ASUSのメーカーサイトから購入しました。2017年のことでした。FREETELとのSIM契約は継続しました。
ZenFone 3 MAXのバッテリーはそれなりに持ちましたが、ストレージ容量が16GBであったため、再びアプリをインストールする容量が不足してきました。使う可能性がありそうなアプリも削除しなければなりません。ストレージ容量は余裕を持たせた方がよいと実感しました。当然、次の機種変更では少なくても32GB、できれば64GB以上のスマホと考えていました。現行のiPhoneに関していえば、すべてのモデルが64GB以上です。

実はiPad mini 2 を2014年に購入し、7年以上使い続けています。Kindleアプリで小説や本を読んだり、広辞苑大辞林や精選版日本国語大辞典をインストールしたりするなど、とても重宝しています。有料アプリをいくつも購入していますので、本来はiPhoneを使用した方が有料アプリの共有ができ合理的です。
スマホでも辞書アプリなどを使えたほうが、何かと便利なことは確実です。iPhoneが相変わらず高くても、iPhoneへの復帰を考えるようになりました。ストレージ容量が大きい機種は、Androidスマホでも相応の値段になります。

スマホに大金を掛けたいとは思いませんが、自分にとってiPhone SE (第2世代)はスマホの対価として支払ってもよい値段です。そして2021年になりiPhone SEを購入しました。その時に通信事業者の乗り換え(MNP)も行いました。
数年前にブランド統合をした、旧FREETELから楽天回線への乗り換えです。楽天回線への乗り換えも検討中でした。楽天モバイルからiPhone SEを購入し、楽天回線(Rakuten UN-LIMIT VI)へ乗り換えました。最近のことでです。iPhone SE に機種変更して正解でした。分かっていたことですが利便性が格段に向上しました。

実はiPhone 4を使っていた頃、ホームボタンの反応が悪くなるという不具合を経験しています。Softbankとの契約であったため、問い合わせたり実店舗に持っていったりしました。メーカーに送るという話にもなりましたが、結局、使い続けました。その時、メーカーに送るのが何か面倒に感じたからです。操作できないわけではなく、機種変更してしまおうという考えもありました。
iPhone SEではホームボタンが復活しました。現行のiPhoneの他の機種にはホームボタンがありません。そのことが頭の中にありましたが、10年以上も前のことですし、性能も向上しているだろうという結論に至りました。またiPad mini 2 を7年以上使用していますが、ホームボタンの不具合はまったくありません。
新しく購入したiPhone SEのホームボタンの状態は良好です。Touch ID認証の反応も同様に良好です。ただ電源を入れるためにサイドボタンを押したときに、一瞬反応が悪いように感じました。けれども思い過ごしのようで、少し強めに長く押せば問題ないようです。iPhone SE (第 2 世代)の起動後は、サイドボタンを軽く押すとスリーブ状態になり、長押しすると再起動します。

iPhone SE へ機種変更したことで、Apple Pay が使えるようになりました。ZenFone 3 MAX がFeliCa 非対応でしたので、Apple Pay をとても便利に感じています。スマホによるキャッシュレス決済が、ZenFone 3 MAXを使っていたときはQRコード・バーコード決済のみでしたので格段に利便性が向上しました。FeliCa 対応のAndroidスマホであれば、おサイフケータイとして楽天EdyWAONを使うことができますが、なくてもそれほど支障はありません。
iPhone SEは他のiPhoneに比べるとスペックが落ちます。それでも使い勝手がよく、iPadで購入した有料アプリをスマホで使えるようになり、満足しています。それにiPhone SE で撮影した写真は綺麗です。4Kビデオの撮影もできます。仕事でもプライベートでも有効活用できそうです。

辻村深月『鍵のない夢を見る』町の事件をテーマにした5篇、結論を読者に委ねる

辻村深月さんの短篇集『鍵のない夢を見る』(文藝春秋, 2012年5月)は第147回(2012年上半期)直木賞受賞作です。辻村深月さんは1980年山梨県生まれ。直木賞受賞は32歳のときでした。
単行本の帯には「恋愛、結婚、出産。普通の幸せ、ささやかな夢を叶える鍵を求めて魔が差す瞬間」と書かれています。

短篇集『鍵のない夢を見る』には、「仁志野町の泥棒」「石蕗南地区の放火」「美弥谷団地の逃亡者」「芹葉大学の夢と殺人」「君本家の誘拐」の5篇が収録されています。いずれも一人の女性を主人公とし、彼女らの視点で物語が描かれています。彼女らは2、30代の女性たちです。

上梓の際の著者インタビューにおいて、辻村深月さんは次のようなことを述べています。

「新聞やテレビのニュースで大きく取り上げられることのない“町の事件”を扱う短篇集にしようと、はじめに決めました」(文藝春秋のウェブメディア「本の話」より)

「今回は、より経験豊富な方々にも読んでもらいたいと、結論を出してしまわずに“読者に委ねる”書き方を意識しました」(文藝春秋のウェブメディア「本の話」より)

普通の人に訪れる転落を描く、作家の新境地 『鍵のない夢を見る』 (辻村深月 著) | 書評 - 本の話

短篇集『鍵のない夢を見る』の初出は次のとおりです。

仁志野町の泥棒 オール讀物2009年10月号
石蕗南地区の放火 オール讀物2010年4月号
美弥谷団地の逃亡者 オール讀物2010年1月号
芹葉大学の夢と殺人 文春ムック「オールスイリ」
君本家の誘拐 文春ムック「オールスイリ2012」
(巻末からの引用)

辻村深月さんは、上梓のインタビューにおいて次のようなことも述べています。

「いずれ、ひとつの事件を、当事者だけでなく、報道する側など、多数の視点で描く小説を書いてみたいですね」(文藝春秋のウェブメディア「本の話」より)

「仁志野町の泥棒」は、大人になった主人公の「ミチル」が、小学生3年生のときに転校してきた律子とその母親のことを回想する話です。「私」という一人称で語られます。彼女たちが通っていた学校は全学年一クラスずつ。二人は小学校を卒業するまで同級生でした。
冒頭は観光バスの車内。ミチルは母に誘われて「お伊勢参りバスツアー」に参加しました。案の定、周りは中高年ばかりで、若者はミチル一人。ミチルは小学校の教師になっています。偶然にも、そのツアーのバスガイドが、律子でした。顔を見た時、「あ、りっちゃん」と気づきましたが、声を掛けることはありません。
律子の挨拶や日程の説明が終わると、ミチルの回想が始まります。律子は、小学3年生の夏休み明けに転入してきました。律子と一番仲が良かったのは、クラスでの人気のある優美子。それにミチルも加わり三人一緒に遊ぶようになります。
5年生になったミチルは、同級生の樹里から律子の母親のことを知らされます。驚いたことに優美子はそのことを知っていました。親たちの反応は様々だったものの、警察沙汰にはなりません。地域の大人たちは、律子の母親に対して、結局は寛容な態度をとりました。子どもの間でも、律子を非難するような噂はしばらくすると止みました。
そして6年生の夏休み、ミチルは噂の真相を目の当たりにするのです。ミチルの母親は、律子ちゃん自身はお母さんのこととは関係ない、とミチルに言い聞かせることさえします。そしてミチルは、律子から泣き崩れながら謝罪されたこともあり、これまで通りの関係を続けます。しかしミチルは、律子と優美子と三人で買い物に行ったとき、律子から裏切られることに。

「石蕗南地区の放火」の主人公は、笙子という女性で年齢は36歳。短大卒業とともに財団法人町村公共相互共済地方支部に就職し、現在に至っています。結婚願望があり、学生時代からわりとモテていたようですが独身です。両親は心配し見合い話を持ってきます。
「石蕗南地区の放火」では、消防団の詰め所で不審火が起こります。そこは笙子の実家の真向かいです。

「美弥谷団地の逃亡者」の主人公は浅沼美衣。彼女は高校生のときから出会い系サイトを利用していました。そして、高校を卒業してから3年ほど経った頃、出会い系サイトで知り合った、陽次という男と付き合い始めました。美衣は、DVを受けても冷静な判断ができず、遂には悲劇が起こります。
「美弥谷団地の逃亡者」の冒頭は、相田みつをの詩の引用で始まります。美衣と陽次の二人が連絡を取り始めたばかりの頃、陽次は美衣に相田みつをの詩をメールで教えました。美衣はとても感動し陽次に好意を抱き、二人はすぐに親密になっていったのです。

「芹葉大学の夢と殺人」の冒頭は、「指名手配中の容疑者、女性を突き落とす?」という見出しの、報道記事で始まります。それに続けて「私」という一人称で物語が語られてゆきます。彼女は、大変な事態になっても、好きになった相手のことを思いつづけます。彼女は究極の自己犠牲をも躊躇しませんでした。

「君本家の誘拐」の主人公は君本良枝。彼女を主人公にした三人称小説です。最後の章のクライマックスなどで何カ所か「私」という一人称が使われていますが、基本的には三人称で展開してゆきます。他の4篇は、主人公「私」の視点による一人称小説でした。
「君本家の誘拐」は出産と育児を題材にしています。冒頭の場所は、大型ショッピングモールに入ったショップの一つ。良枝が、ベビーカーがないと慌てふためく場面です。
場面の区切りには、1から8までの番号が振られています。2番目の章になると、場面が大きく変わります。2章から7章までは、子どもを授かるまでのこと、授かってからのことが、走馬灯のように語られてゆきます。そして最後の章では現在に戻ります。良枝本人が一番驚くような展開です。良枝が最後にとった行動にも考えさせるものがあります。

 

一週間、憂鬱にさせられたiPadのKindle

iPad miniを長く使ってきました。使い始めてから7年以上が経ちました。
小説などをよく読むので、Kindleアプリも使っています。2021年7月現在のKindleのデータ容量は1.25GBです。
単行本や文庫本だと場所をとりますし、汚れたり劣化したりする心配もあるので、購入方法の選択肢にKindle版があれば選ぶことがほとんどです。
このようにとても重宝していましたが、一週間ぐらい前からKindleアプリの調子が悪く、とてもイライラしていました。紙の本にはない憂鬱さ。

どのような不具合かというと、読書中に画面が真っ白になるという事象です。
指で操作して次のページに進もうとすると真っ白になってしまいます。
ページを行き来しようとすると真っ白な状態で固まってしまうのです。
電子書籍を購入するのをやめようかと思うくらいの操作性の悪さを経験しました。

Kindleを7年以上利用してきました。
これまで経験したことのない状況です。
一瞬、iPad本体に原因があるかもしれないとか、負荷がかかっているかもしれないとかも考えました。
しかしそれはなさそうです。

iPad miniには、中型国語辞典を3種類インストールしていますが正常に動作します。他のアプリも正常です。
原因はiPad本体ではありません。不具合はKindleアプリを使っているときだけ。

本日、7月7日、App Storeをチェックしてみたら、「操作性の向上とバグの修正」(バージョン6.44・134.5MB)を発見。
アップデートが必要です。
すぐにアップデートしました。

アップデート後にKindleアプリを起動して操作したら、至って正常に動作しました。
イライラしながらアプリを再起動していたのが嘘のように操作がスムーズです。
以前のアップデートにバグがあったのですね。
アップデート前のバージョンは6.43.0.100(1.0.245112.0)でした。

一週間ぐらい前からの憂鬱は、こうして思いのほかあっさりと解決しました。